「当初私は、劇的に改善した生徒たちに“先生のご指導のおかげで良くなりました!”と、感謝されると思っていたんです。でも、そんなことは全くありませんでしたね(笑)。なぜなら彼らは心の病を抱えていた時期の記憶をすっかり忘れてしまっているからなのです。あの頃の君はこんな風だったんだよと話しても、“えっ? そんなことがあったんですか?”という感じで、まるで狐につままれたような表情をするんですよ。逆に、彼らがここまで変わってくれると、安心して社会に送り出すことができます。指導者としてはうれしいような寂しいような、ちょっと複雑な気分にはなりますが…。」
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